プレゼンテーションの大前提は人前で話すことですが、人前で話すことは誰にとっても非常に怖い行為です。
前の記事「エモいプレゼンの作り方」で紹介したプレゼンにおける必須の3大原則だけではプレゼンを実施する際の心理的なハードルはなかなか越えることができません。
大勢の目線が自分に集中する場面で体が緊張することは人間の本能からくる生理的な反応なので、このような不安や緊張をプレゼンの前に感じることは避けられないのです。
しかし、このような生理的な反応もコントロールすることはできます。
そのための心構えに共通するポイントはいかに話し手が話しやすい状況を作るかということです。
事前の準備や対策を知っているだけでもこのような不安や緊張を小さくすることは可能です。
傷つくのが怖いなら
プレゼンにまだ慣れていない初心者のうちは自分以外の誰かを演じながら話す方法をお勧めします。
自分がどうありたいかという思いと「明日大切なプレゼンがある」という話は全く別次元の問題です。
好きであろうとなかろうとプレゼンの日時は迫り来ます。 その際に幽体離脱のように誰かを演じながらプレゼンするという考え方が役に立ちます。
ガラスのハートを守ろう
そもそも人前で話す時に緊張するのはなぜでしょうか?
- 失敗するのが怖い
- 笑われるのが恥ずかしい
- 馬鹿にされたくない
- 聞いている人にどう思われるか不安
など、さまざまな理由が考えられます。
これらの緊張してしまう原因のを集約すると大部分は「他人からの評価がきになる」ということではないでしょうか。
例えば勤務先の上司から「忘年会で何か余興をやってくれないか? 爆笑の渦が巻き起こるのを期待しているよ! 」と少々パワハラまがいではありますが依頼があった場合、本来であればスルーしたいところですが、上司からの懇願ともなるとなかなか断ることもできません。 そんな時にどうするか?
- 0から面白いネタを考える
- 最近話題になっている誰もが知っている芸人のネタをパクる
この2つの選択肢があるとしたらどちらを選ぶでしょうか。
1を選ぶ人のチャレンジ精神は大好きですが、これはかなり笑いに自信がなければ相当なリスクが伴う選択です。 多くの人は2を選びたくなったのではないでしょうか。
2を選択した理由は「成功率が高く失敗のリスクが低いから」、また「失敗した時にもダメージが小さいから」と言ったものでしょう。
笑いのプロが作ったネタであるためお手本通りにやれば誰でもそれなりに笑いが取れます。 成功率が高いのです。
しかも忘年会の後に「面白かったよ」と言われるのはネタを作った芸人ではなく、ネタを披露したあなたであるのは間違いありません。
逆にネタの流行りが過ぎていて滑ってしまうケースも考えられます。 イメージもしたくないような最悪の状況ですが、その場合でも自分で0から作ったネタで滑るよりはパクリネタで滑る方が100倍マシです。
なぜなら「あのお笑い芸人のネタで滑った」となってあなた自身の評価が悪くなる可能性は極めて低いからです。
これこそがプレゼンで誰かの真似をする最大のメリットです。
「うまくいったら自分の成果、心配しても人のせい」というとても人には言えませんが責任転嫁を心の中で成立させることができます。
プレゼンに話を戻しますが、プレゼンにおいても「あなたが演じることができる対象」になりきり演じながら話すことがコツです。
- もしその人であればあなたが伝えたいメッセージをどのように伝えるでしょうか?
- その人はどのような口調で話しますか?
- 口癖はありますか?
- 話し方に特徴はありますか?
- 話をしている時に身振り手振りはありますか?
こう言った点を意識して完コピするつもりでプレゼンしていきましょう。
丸パクリでも問題なし
「自分以外の誰かを演じる」という選択肢があることを頭に入れておくことはプレゼンを行うための一つの方法です。 誰かになりきってプレゼンを行うことで極度の緊張を緩和する助けになります。
誰かを演じて伝えたとしてもそれがあなたのプレゼンであったことに違いはありません。
どのような方法であれ「いい話だった、是非行動してみよう」と思ってくれるのであれば頑張ってプレゼンした価値はあったと言えるのではないでしょうか。
さらにできる人を真似ていれば自ずと理想的な形に近づくものです。
私個人的にはプロの話し手がたくさん出てくる「TED」や「滑らない話」などの動画をたくさん見て真似ることをお勧めしています。
ただ一人のターゲットに集中
プレゼンでは聞き手全員を満足させようとせず、特定の一人を満足させようと意識することも重要です。
どんなに大勢の前で話すプレゼンでも「この人だけにはわかってほしい! 」という特定の聞き手を想定しその人に伝わるようにプレゼンの内容を用意します。 またそうすることで緊張や不安を感じることなくプレゼンに臨めます。
- 準備段階でたった一人の聞き手を具体的にイメージしながらコンテンツを作成する
- 実際のプレゼン時、話に興味を持ってくれた特定の聞き手に意識を集中させ、全力で伝えることで緊張や焦りを避ける
この2つの要素が、この心構えにはあります。
誰に届けたいのかを決める
プレゼンの目的は「聞き手に行動してもらうこと」です。 このことについては「プレゼンの目的とは何か」の記事で詳しく紹介させていただいています。
聞き手が複数いる場合全ての人に行動してもらうことは現実的ではなく、たった一人でも行動してもらえたら一応は成功と言えます。
聞き手を限定して、話の内容を具体的に作成するからこそ相手にストレートに伝わり、切迫感を持って訴えかけることができます。
そのためにはプレゼンの内容についてターゲットを絞り込んだ内容で用意しておく必要があります。
- 誰にとって
- どんなメリットがあって
- どんな不具合を解消できるのか
逆にターゲットを絞り込まず誰もが同意できるような一般論では、話を綺麗にまとめることはできても、プレゼンの目的である行動を引き起こすような聞き手をせき立てることはできません。
例えば、マルシェを開催するにあたり出店者を募集するための説明会でプレゼンをしました。 プレゼンの内容を準備するにあたり、AさんBさんどちらの顧客に対して提案する資料を準備するのが良いでしょうか。
【Aさん】マルシェに出店してみたいと考えている人。
【Bさん】地元で小規模農業に従事している30代女性。 旦那様と小学3年生の息子、5歳の娘の4人暮らし。 低農薬など地球や人に優しい農法に興味がある。 手間ひまかけて作った野菜への思いを直接消費者に伝えることのできる場を探している。 季節の移ろいに合わせて収穫できる内容も変わってくるので定期的に販売する方法を考えている。 家族や友達とBBQをしたり近所の公園などで子供たちと遊ぶのが好き。 地域貢献にも興味がある。
いかがでしょうか? 当然Bさんに対しての提案資料を作った方が確実に出店してもらうことができそうではないでしょうか。 Aさんについては情報が少な過ぎて具体的にどんな提案をしたら良いのかなかなか検討がつきません。
このようにターゲット像を明確に文章化しておくことで、組織でプロジェクトを動かす際にもチーム内での認識の相違が生まれにくくなります。
話を戻すと、プレゼンではその聞き手が「何に困っているのか」「自分ならその人に何を提供できるのか」「自分との共通点はどこか」を考え、聞き手を一人だけと想定して、他の人のことはあまり考えずにコンテンツを作成していきましょう。
実は、このように聞き手全員の最大公約数を考えるよりも、その一人だけに深く刺さるプレゼンの方が、結局はより多くの聞き手に行動してもらえるものです。
敵に惑わされない
たとえどんな素晴らしい話でも、聞き手の全員が興味を持って最後まで集中して聞いてくれるなんてことは滅多にありません。 実際には聞き手にあまり興味を持ってもらえず、話し手であるあなたの心が折れそうになってしまうこともあります。
そういう時には話に興味を持ってくれた特定の一人に向けて全力で伝えることが重要です。 たとえ他の聴衆の表情があまり冴えないものであったとしても、話し手であるあなたの心が折れにくくなります。
聞き手の中のたった一人を味方につけることにまずは全力を注ぎましょう。
聞き手の状態をコントロールする方法
- みんな話を聞いてくれているだろうか
- 自分は相手にどうみられているだろうか
プレゼンが始まると最初はこのようなさまざまな不安があるため、テンションは低いところから始まるのが普通です。 そこから徐々に熱がこもり一定のテンションまで上昇すっるのが一般的な話し手のテンションの推移です。
しかし聞き手の集中力のピークはなんとプレゼンの開始直後にあるのです。 そして話を聞き続けるにつれて徐々に集中力は低下するのが通常です。 どんなに面白い話であっても聞き手を継続的に集中させることができる限界は15分程度です。
そしてさらに恐ろしいことに、聞き手が受けるプレゼンの全体の印象はプレゼン冒頭の最初の1−2分で全て決まってしまうのです。
初めからフルスロットルで話しはじめよう
これらの事実から話し手が取る最善の手段は「プレゼン冒頭の一分間は自分の中の熱量をMAXにして話す」ことです。
聞き手と話し手のテンションは開始直後に大きなギャップがあります。 そのギャップを埋めるために冒頭から話してはテンションを上げてそのギャップを埋めにいくのです。
そうすることで聞き手が話を聞く姿勢は全て話し手であるあなたがコントロールすることができるようになります。
少しスパルタな考え方のようにも思われますが、緊張するから声が小さくなるというのは間違いです。。 むしろその反対で、小さい声で話すから聞き手が静まり返り、話し手が緊張する状況をその場に作り出してしまっているのです。
むしろ緊張していればしているほど大きな声で話し始めましょう。 聞き手の集中力が高いうちに明るく良い印象を抱かせつことができればその後のプレゼン全体に対する印象もぐっと良くなります。
まとめ
- 自分以外の誰かを演じプレゼンを行うことで成功率が高まり、もし失敗したとしても精神的なダメージも最小化することができる。
- 聞き手全員の指示を得る必要はない。 最も伝えたい人を決め、その人に伝わるようにコンテンツを用意しプレゼン時の見方を作る。 その一人の味方に意識を集中させて話すことで緊張や不安を取り除くことができる。
- 冒頭の1分間は最大の熱量で話し始めることで、聞き手の集中力をより長く維持させるとともにプレゼン全体に対する印象をよくできる。
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