はじめに
プレゼンにおいて話し始めの数分はとても大事な時間です。
この記事では聞き手の心を掴むためのプレゼンの冒頭、始め方について具体例をもとに説明しようと思います。
ここで紹介するテクニックは「アイスブレイク」と「パンチトーク」と呼ばれる2つの方法を下記にて紹介させていただきます。
アイスブレイク
「アイスブレイク」とは初対面の相手との間に存在する緊張や警戒心といった「氷の壁」を「解きほぐす」という意味を持つ言葉です。
よくある例としては「今日は良い天気ですね!」といった天気ネタや、その日のニュースなどの時事ネタから話し始めることで、スムーズなコミュニケーションが始められる基本的なテクニックです。
上手なアイスブレイクでプレゼンを始めることができれば、聴衆の人数に関係なく、話し手と聞き手の間に話しやすい関係性を作ることができます。
プレゼンテーションにおけるアイスブレイクの一つの目安は、開始から60秒以内に聞き手の中の一人を笑顔にすることです。
アイスブレイクに正解はないので、今回は一つの例をもとに紹介させていただきます。
今回紹介するアイスブレイクでは、まずは聞き手の中に一人見方を作ることを目指します。
その上で少しずつ味方を増やしていき、最終的には聞き手全員を巻き込んでいくといったイメージを持っていただければ大丈夫です。
構成要素は次の4つです。
「表情」×「声」×「間」×「挨拶」
ひとつづつ確認してみましょう
表情
プレゼンの冒頭でアイスブレイクを行うのですが、この最初の1分間は真面目な表情は1秒も作りません。
登壇してから最低でも聞き手のうち一人が笑顔になるまでの間、常に「自分史上最高レベルの笑顔」を維持し続けます。
「自分史上最高レベルの笑顔」と書きましたが、人は自分の思っている以上に人前へ出ると緊張で表情がこわばってしまうものです。ですのでこのぐらいの心算で登壇するぐらいでちょうど良い笑顔を作れるようになります。
人間の脳にはミラーニューロンという神経細胞があり、別の個体の特徴的な表情や行動を目にすると、この神経細胞がそれらを模倣しようとする反応を示します。そのため他人の笑顔に対してはミラーニューロンを働かせて笑顔を返そうとする本能を持っています。
むしろ笑顔の人を前にして、無表情やしかめ面を維持する方が難しいでのです。
声
プレゼン冒頭のアイスブレイクの最初の1分間は明るい声のトーンと、大きめな声も維持していきましょう。
ポジティブなイメージを持ってもらうために最初の1分間は特に元気よく大きな声で話し始めることが重要です。
可能な限り滑舌良くはっきりと、相手にも聞こえる声量で話し始めることを心がけましょう。
間の取り方
笑いが起こる瞬間に絶対に必要なものが「間」です。
聞き手が自分の頭で言葉や状況を理解し咀嚼するための時間が「間」です。
具体的な魔の取り方は
- 「質問」+「間」
- 「協調」+「間」
というふたつの組み合わせがあります。
「質問+間」は聞き手に問いかけた後に「相手が何らかのリアクションを取るまで笑顔で頷きながら待ち続けること」を指します。
「協調+間」は話し手が特に伝えたい箇所を強調した後に「聞き手がその言葉を咀嚼しているあいだ、話を理解できていない人を笑顔で探す」という魔の取り方をします。
緊張しているとなかなか間をとれず、急いでしまうので、心の中で「いち、に、さん・・・」とっ数を数え、5秒程度の間を取るようにしましょう。
挨拶
アイスブレイクで面白い話をする必要はありません。「面白い雰囲気」を作ることができれば問題ないのです。
前述した3つの要素で面白い雰囲気を作ることは可能です。
この3つを用いてごく普通のあいさつをすればいいのです。
恥ずかしがらずに満面の笑顔で思い切り最大のテンションと声量で話し始めましょう。
それをするだけで開始1分で確実に話しやすい空気を作り出すことができます。
パンチトーク
冒頭の1分間の挨拶でアイスブレイクを入れた後はパンチトークを行います。
パンチトークとは話し手自身の影響力を高め、聞き手からポジティブな印象を持ってもらうためのトークのことです。
話し手がそのプレゼンを語るに値する人物である、と聞き手に認識させ、話の内容に集中できる状態を作ります。
パンチトークは次の3つのステップを追うことで自然に話せるようになります。
- プレゼンのテーマを明確にする
- 自分の「経歴」「実績」「知識」「経験」などを紹介し、なぜ自分が今このプレゼンを行なっているのか、プレゼンするに値する人物なのかを明確にする
- プレゼンのテーマを通じて聞き手にどうなってほしいのか、熱い想いを伝達する
プレゼンのテーマを明確にする
まずは、今回のプレゼンは「何のため」のもので「誰のため」に「どのような内容」について話すのか、またその結果どのようになってほしいのかなど手短に説明します。
アイスブレイクの後には必ず、その日のプレゼンのテーマについて聞き手と認識を共有するようにします。
自分がこのプレゼンを語るに相応しい人物かを明確にする
例えば私の場合は企画している地域のマルシェを開催するにあたり、地元の出店希望者向け説明会を毎年開催しています。
そこでこんなフレーズから話し始めたとしたらどのように感じるでしょうか。
「私は普通のサラリーマンですが、会社の転勤でこの村にやってきました。今回、会社の方針で地方創生の視点からマルシェを開催することになったので出店者を募集したいと思い、今日は皆さんに出店の概要をお伝えします。」
どうでしょうか?
価値ある可能性はゼロではないかもしれませんが以下のような不満が出てきそうなものです。
- この村に住みたくてきたわけでもない人間が地方創生を語るな
- 地方創生とかはよくわからないから出店すれば稼げるのかだけ教えてほしい
このような不満を聞き手が抱いたままプレゼンに入ったとしても、プレゼンの目的を達成させることは難しいでしょう。
それでは次のように話したらどうでしょうか?
「私は小さい時からこの地域には毎年家族旅行で訪れていました。その時に覚えたスキーがきっかけで学生の時にも毎年住み込みのアルバイトをしながらスキーをしにこの村へは通っていました。ここ出であった人たちから「海外の山は滑りに行ったらとても楽しかった」という話をよく耳にするようになり、「自分もいつか行ってみたいなー」と思っていたのですが、実際に大学を卒業してからカナダへ渡り4年間日本から離れて生活をすることになりました。その時初めて日本を離れた私は客観的に母国を見て、今まで気づかなかった魅力がたくさんある国であることに気がつきました。「日本へ帰ったら地域の魅力を伝える仕事をしたい!」そう思うようになった私は「地方創生」というキーワードで就職活動をして今の会社に就職し、思い入れのあるこの地域で働きたいという希望を会社に理解してもらうことができ、この地へ赴任してきました。地元の人と観光客が繋がることで、人と人とのつながりから人と地域のつながりが生まれ、口コミとなって地域の魅力は発信されていくと感じています。そのような場所をこの村でも作れないかと考え、私がカナダで生活していた街でやっていたファーマーズマーケットを参考に、マルシェの企画を考えました。今日はこの村の魅力を発信していく上でみなさまに出店者として協力いただきたいと思っています。」
最初の伝え方と比較すると過去の実績や根拠をストーリー仕立てではっきり伝えることができています。そのためプレゼンの本題に入る前に安心感を与えるパンチトークになっています。
パンチトークにはこれまでの実績や経歴を具体的な数字を入れ込みながら紹介するのが有効です。
プレゼンの本題に入る前に、自分自身のプレゼンをすることも怠らないようにしてください。
聞き手にどうなってほしいか想いを伝達する
パンチトークの最後のステップです。
今回のプレゼンを聞いて、その後聞き手にどうなってほしいのか、あなたの思いを伝えます。
ここで重要なのは伝える時の「熱量」です。
抽象的でわかりずらい概念ですが、話し手の「一生懸命さ」「必死さ」「本気さ」などを熱量と表現しています。
実はこれが一番大切でありながら一番難しいところでもあります。
なぜこの熱量が重要なのか?それは「人は話し手の熱量に引き込まれるから」です。
たかがプレゼンだと思って、口先だけで話しては熱量は伝わりません。
多かれ少なかれあなたの一言が目の前の聞き手一人ひとりの人生を変えるのだ、という確固たる思いを持ってください。
どう変わってほしいのか、明確に言葉で伝達します。
思いは通じるというのは実際にはあり得ません。
レストランで「カレーが食べたいなー」と思いながら「オムライスをください」と伝えれば間違いなくオムライスが出てきます。「カレーが食べたい」と言葉で表現して初めて相手に伝えることができるのです。
プレゼンにおいては「今日からあなたにはこうなってほしいのです!」とはっきり言葉で宣言します。
アドリブは禁物
以上の3ステップを全て実行することで有効なパンチトークを行えます。
パンチトークを行うためには、事前に話す内容を細部までしっかり決めておくことが必要となります。
その場でいきなり思いついて熱量を持って伝えられるほど甘い内容ではありません。
これはアイスブレイクにおいても同様です。
まとめ
アイスブレイクに1分、パンチトークに1分程度の合計2分程度で場の空気を話しやすいものに変えましょう。
これで聞き手の話し手に対する疑念や不安を完全い解消し、素直に話の内容に引き込むための準備が完了します。
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